島根県芸術文化センター 「建築のちから」を読んで

島根県芸術文化センター 風景
集落のような建築
先週から再読していた内藤さんの「建築のちから」を読み終えました。
13年たった今でも共感できる部分が多々あります。
中でも内藤さんが島根県芸術文化センターについて書かれている部分を読んでいると、実際に訪れた頃の記憶が蘇ってきました。

大学4年の頃、島根県芸術文化センターを見るために東京から片道14時間の夜行バスに揺られて島根県の端にある益田という地域に行きました。

この地域独特の赤い瓦を纏った建物群は一つの集落のようであり、少し異様な風景にも見えましたが、100年後もきっとその価値が落ちることなく残り続けていくだろうという力強さを感じました。

すぐに消費されてしまう流行りのデザインとは縁遠いところにある建築で、古民家とも通じるものがある気がします。

島根県芸術文化センター 図書館
 神殿を思わせる図書館
島根県芸術文化センター ホワイエ
砦の様なホール・ホワイエ
中へ入ると神殿か砦を思わせるような、ヒューマンスケールを超えた力強い空間です。それでも素材の扱い方や、丁寧なディテールの集積が居心地の良い空間を作っていました。

島根県芸術文化センター 中庭
中庭と水盤
この建物は中庭を中心に切妻屋根の建物群が配置されています。中庭の中央には25m×25mの水盤があり、この水盤に映る景色を見ていると時間を忘れてしまいます。訪れた時も半日以上この場所で時間を過ごしてしまいました。

「建築のちから」を再読してみて、学生時代の集大成ともいえる卒業論文・卒業設計でも影響を受けていたことを思い出しました。学部時代から大学院までずっと参照していた本ということになります。

社会に出て、こうした建築の考え方から遠ざかり、実務優先の思考になってしまっていました。
性能や機能・法規、受けの良いデザインを満たすだけでは建築はすぐに消費されて時代に取り残されたものになってしまいます。

改めてそうしたものを超えた魅力を持ち、100年後も残り続けていける価値のある建築を考えていきたいと思いました。