ほどほどに直すということ

修生
建築費が高騰する昨今、古民家を現代の仕様に合うようにすべてを綺麗に直すことは現実的ではありません。もちろん予算が潤沢にあればその選択肢も出てきますが、新築住宅を建てるよりも高額な費用がかかります。それは全てを直そうとするからです。古民家は必ずと言っていいほど床が水平ではなく、建物も傾いています。基本的にはこの状態は直さなければなりません。

床の水平は居住性に影響がありますし、その傾きの原因は土台が腐って無くなって沈んでいる場合があるからです。一般的には古民家の年数を経ていれば土地の圧密沈下は完了していると言えるので極端に荷重が増えなければこれ以上沈む可能性は低いです。それでも万が一ということもあるので建物を持ち上げてべた基礎を作り、不同沈下が起こらないように改修したりします。もちろん基礎を作ることはその他にも良いことが色々とあります。

また、建物の傾きを直さない場合、建物には常時水平方向へ力が加わっていることになります。これは建物にとって負担になりますし、地震の際に水平力が傾いてる方向に対して割り増されることになります。また耐力壁は理想状態(四角形)での試験値で計算します。傾いている場合は初期設定が平行四辺形のフレームとなるため、これも耐力壁の理想値通りになるとは言えません。

このような理由から基本的には傾きや沈下は是正する必要があります。
しかしこの是正工事には多額の費用がかかります。曳家さんにお願いして直していきますが、傾きなどを直すことによって土壁なども壊れてしまいます。そうした補修をすることを考えると、傾きと沈下の是正はほぼ柱梁だけのスケルトンにして直す必要が出てきてしまいます。

私たちは自身の古民家を直すときに、上記のような工事は予算が無かったのであきらめました。唯一床の水平だけはしっかりと直してもらっています。雨漏りと床の水平を直して、最低限の居住空間を整えることに予算をつぎ込みました。こうしたその場しのぎのような直し方は古民家をしっかりと直して後世に受け継いでいくという考え方とは異なります。もしかしたら私たちがこの古民家を購入せずにもっと予算が潤沢にある方が購入すればもっとしっかり直せたかもしれません。ですが私たちが購入したこの古民家は解体の危機にありました。今では考えられませんが、売れない状態が何年か続いていたため解体して分譲地にするという案もあったそうです。

道を走っているとこの前まであった古民家が解体されて無くなっているのを目にすることがあります。理想を言えば全てをしっかりと直したいです。ですがそれだけを言っていては存続できる古民家は少なくなってしまいます。色々な残し方があっていい、古い部分は古いまま、たとえ壁が塗り足しであってもそれが建物の表情になる。そう思いながら厳しい時代でも何とか知力を尽くして古民家を後世に受け継いでいく方法を模索しています。