樹種:クリ・ピーラー・サワラ
塗装:蜜蠟ワックス
サイズ:300×300×700
独立型の洗面台を製作しました。この洗面台製作は材料を自力製材するところから始めています。主な材料は屋敷林の伐採で発生したクリです。4mのクリの丸太からこの洗面台ができるまでの製作過程をご紹介します。
制作風景
独立の洗面台
この古民家に移住してから2年半が経過してようやく洗面台を製作しました。設計の段階では背の高い石の手水鉢を置いて壁に水栓を取り付けた状態をイメージしていました。一応候補としていた手水鉢もあったのですが、排水の接続が上手くできそうにないこととやはり収納も少し欲しいということで考え直しました。
手水のようなイメージで独立の洗面台というのは変更せず、木の箱を作ってその上に銅製の水鉢を置くというスタイルに変更しました。独立の洗面台にこだわったのは洗面脱衣室のように普段見せない場所に置かれるものではなく、むしろ来客を出迎える位置にあってインテリアとして目立つ洗面台だからです。お寺や神社の手水や茶室の庭にある蹲など、オブジェとしても成り立つようなものにしようと考えました。
始まりは製材から
どうして製作に2年半もかかったかというと、最初の1年は製作している余裕が無かったということ。そして残りの1年半はまず板の製材から始まったことにあります。洗面台を作るにあたってボウルを置く台をどうするか悩みました。最初石を置く予定でいたのでタイルがいいのか、荒っぽくセメント板がいいのか、それとも壁と合わせて左官塗りが良いのか色々考えた末、そう広くない室内で石はちょっと強烈過ぎてバランスが取れないし、壁と同じ左官ではオブジェとしてメリハリが無いことから木を使うことにしました。
そして何の木を使うかですが、室内の造作がスギとヒノキで作られているので淡い色の広葉樹が雰囲気も合うし家具としても良いということになりました。そして白羽の矢を立てたのが屋敷林伐採で庭に置いたままだったクリの木でした。クリの木は一本しかなく虫食いもあったので建材に使う予定はなかったのですが、洗面台のサイズならひょっとして板が取れるのではと思い、自力で製材してみることにしました。
まずは長さ4m程の原木を手鋸で90cmに玉切りしてチェーンソーが使える位置まで転がして移動させました。後は3本の玉から3cm幅を目安にチェーンソーで縦挽きです。虫食いが多くてほとんど使えるところがなく、本当に作れるか不安でしたがとりあえず製材だけはしてみました。
自然乾燥に1年
無事に製材を終えて軒下に桟積みして1年自然乾燥させました。この時はまだ使える板数もよく把握していなくて足りなければ何かべつの木工製作に回せばいいかなとだけ思っていました。
板を綺麗にする
1年の乾燥を終えていよいよ板を綺麗にすることにしました。チェーンソーで製材して経年変化もあって表面はガタガタでねじれも反りも凄いです。電気カンナを使ってねじれと反りを取りながら最後はプレーナーに通して建材として使えるレベルの板に仕上げました。3cmを目安に製材しましたが実際に残ったのは1.2cmくらいでした。
板を接ぐ
板の側を整え仮並べして材料が足りるか木取りをしました。細い材も足せば何とかギリギリ足りそうで一安心したので板の接ぎ合わせまで一気に進めてしまいました。
コア部材と反り止め
今回コアとなる部分の材料はクリでは用意できなかったので手持ちの端材を活用して作りました。そして接ぎ合わせた板は板厚が薄く反りやすいので早めに反り止めを付けておきました。
刻みと仮組
いままでの木工製作の中で一番複雑なつくりになっているので四苦八苦しながら制作を進めました。
組み立て
ようやく形になり組み立てに入りました。この箱は中央に排水管を納めるコアの箱があり、その周囲をクリで製作した箱が包むという入れ子構造になっていて箱と箱の間の隙間が収納スペースになっています。
洗面台設置
製作を始めて2か月、ようやく所定の場所に設置することが出来ました。扉はL型になっていてタオル掛けやボトルなどを収納できます。この後仕上に蜜蝋ワックスを塗りました。
割れと反り
今まで別棟の工房で製作をしていたのですが、空調の効いた部屋で数日置いたところ見事に割れと反りが出てしまいました。板の割れは板接ぎの接着部分なので圧が足りなかったことと板厚が薄いこと、寒い時期にボンドを使ったことなどの要因が考えられます。反りは反り止めごと板が反ってしまったので反り止めに堅木を使わなかったことが原因かもしれません。