2工事開始-居住空間を作る- 屋根替え工事完了一か月後2期工事の内装工事が始まりました。上の写真の中で床が無い部分に1階と2階を作り、新しい居住空間とします。 間口5間×奥行2間の総二階なので約20坪の広さとなります。この居住空間はしっかりと断熱を施すので大きな家(非断熱エリア)の中に小さな家(断熱エリア)があるという考えで設計しました。 「中間期など心地よい季節は大きな家(非断熱エリア)全体を使って生活して、冬や夏の厳しい季節は最低限の小さな家(断熱エリア)で安心して暮らす」 大きな古民家全てを断熱して快適に暮らせるようにするためには新築以上の予算が必要になってしまいますが、こうした考え方を持つことで低予算でも古民家を再生することができます。
1階の床を作る まずは1階の床を作ります。強度が必要な部分の大きな大引きは米松、束やその他の大引きは湿気に強い桧を使いました。現在の木造住宅は在来でもプレカットがほとんどです。 こうした古民家再生では既存の建物に合せて建てていくため、大工さんが材料を一から手刻みしていきます。
柱・梁を入れる 新しく作る2階の床を支える大梁が入りました。強度が高い米松で梁成は270mmあります。 柱は全て桧で既存の差鴨居が垂れていた部分など、構造的に弱い部分を補強しながら新しい間仕切壁部分に建てていきます。
大工さんの技 新しく建てた桧の柱は全て棟梁が手鉋をかけてくれました。今在来木造の現場では手鉋を掛ける機会はほとんどありません。機械で行うモルダー仕上げか超仕上げ、またはプレーナー仕上げになります。手鉋を掛けることで木が持つ脂分が表面に現れ、塗装をしなくても汚れ防止になると同時に綺麗な艶が出ます。 古民家再生では既存のゆがんだ材に新しい材料を当てる部分がたくさん出てきます。その都度大工さんは古い材の癖を拾って新しい材料を刻み、ピタリと合わせていきます。この現場でもそうした大工さんの技が光る部分をいくつも見ることができます。
断熱工事 床組がある程度できた段階で床の断熱材を入れてきます。断熱材は湿気の影響を受けないボード状のもので白蟻の被害を受けないものを選びました。松川村は冬の寒さが厳しいので断熱材も2重にして入れています。天井は高性能グラスウールを200mm入れています。古民家で新築住宅のような気密を取ることは中々難しいので内部結露の被害を起こさないよう通気層をしっかり確保した上で断熱工事をしています。
2階床を作る 2階の床梁がかかったところで床組を作ります。2階床組は半分程1階の天井として現れてくるので丁寧に組み上げていきます。一部分だけもともとあった床組を再編して残してもらいました。この床組の下は台所と食卓になっていて、上を見上げれば真っ黒な根太天井になります。新しい居住空間の中でも古民家の風合いを感じられる場所を作りました。
電気・給排水設備工事 大工工事が進んである程度内部ができた段階で電気工事と給排水設備工事が始まりました。給水管は床下に入れてしまうと全てに凍結防止ヒーターを入れなくてはいけないので断熱上に配管して凍結防止ヒーターを入れる範囲を最低限にしてコストダウンをしています。
内部空間が仕上がってくる 大工工事も終盤に入り間仕切壁ができて内部空間の様子が分かるようになってきました。非断熱エリアとの間にもしっかりと断熱材を詰めています。床の下地板は現在構造用合板を用いることがほとんどですが、この現場では合板は一切使わないことにしているので昔ながらの杉の荒板を使っています。
焼杉を作る 西側の外壁は新しく作る必要があります。そこで屋敷林を伐採して製材してあった杉材を使って焼杉板を作って張ることにしました。焼杉は風が強い所でなければ塗装よりも耐久性があると言われています。焼杉字体は昔から使われてきた材料で、古民家の雰囲気にも合うと考えました。 作り方は単純で3枚の杉板を番線で三角状に組んで立てかけ、一番下の穴に新聞紙や鉋屑を入れて火をつけるだけです。しばらくすると煙突効果で煙と火が上の穴から噴き出してきます。火が出たら鎌を使って少しずつ板を開いてやって杉板の木口も焼いていきます。 初めての挑戦で最初の数回は焼き残りができてしまいましたが、残りは綺麗に焼くことができました。 ※火を扱う危険な作業でもあるのでしっかりと消防署には届出をして行いました。
開口枠の取付と焼杉板張り 外壁板を張る前に開口枠を取付けます。今回窓はアルミサッシではなく建具屋さんが製作する木製建具とFIXガラスを使うので大工さんに桧で枠を作ってもらい、板金屋さんに水切りを付けてもらいました。木製建具はアルミサッシと比べると気密性は劣りますが、枠を工夫したり、気密材を付けたりすることである程度は補うことができます。 開口枠が付いたところで自分達で焼いた杉板が綺麗に張られました。4mある焼杉板の外観は中々見ごたえがあります。杉板の内側には断熱材を200mm入れて外断熱としました。
2期工事完了・引渡し 木製建具とガラスが無事に入り、2期工事が完了しました。約2か月半の工期の中で専門の技術や早さが求められる部分を厳選してお願いすることができました。残っている工事は沢山ありますが、完成を目指して自分達で取り組んでいきます。
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